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【古文】敬語の本動詞と補助動詞の識別方法まとめ【完全版】

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古文の勉強で避けて通れないのが敬語の問題です。まずは尊敬・謙譲・丁寧の3つのタイプがあり、どの動詞がどの意味なのか覚えるだけでもしんどいですよね。

 

しかし、実際の入試問題では敬意の方向や本動詞と補助動詞の違いなどまで聞かれてしまいます。今回は少し突っ込んで、敬語の本動詞と補助動詞の識別について勉強していきましょう。

 

本動詞と補助動詞の違い

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まず一番最初に覚えてほしいのは本動詞と補助動詞の違いです。簡単に言うと本動詞は本来の動詞として使い、補助動詞は動詞としての意味が無くなっているということ。

 

どういうことかまだ分からないと思うので、現代語の例を使って考えてみましょう。

 

「部屋には生徒たちがいる」の場合、「いる」は動詞として働いていますよね。一方で、「彼女は怒っている」の場合は「いる」は動詞として働いているわけではなく、「怒る」という動詞を助けているだけです。

 

このように動詞本来の意味で使うものを本動詞、動詞本来の意味ではないものを補助動詞と呼んでいます。今は現代文の例で説明しましたが古文でも考え方は同じです。次に両者の見分け方について勉強していきましょう。

 

本動詞と補助動詞の識別方法

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本動詞と補助動詞は先ほども説明した通り「動詞本来の意味で使われているかどうか」で決まりますが、古文の場合は色々と見分けるポイントがあるのでしっかり押さえていきましょう。

 

①:上に動詞があるかどうか

まず、尊敬と謙譲についてそれぞれ「給ふ」と「奉る」を例に紹介します。一番基本的な見分け方としては敬語の上に他の動詞があるかないかを見極めるということです。例えば次の例文を見てみましょう。

①:大御酒たまひ、禄たまはむとて

→「給ふ」の上に動詞がないので「お与えになる」という尊敬の本動詞

 

②:「この戸開けたまへ」とたたきけれど

→「給ふ」の上には「開く」という動詞があるので「お~なさる」という尊敬の補助動詞

 

また、謙譲語の「奉る」の例についても見ておきましょう。

①:中納言、御扇たてまつらせたまふに

→「奉る」の上に動詞がないので「差し上げる」という謙譲の本動詞

 

②:ある人に誘はれたてまつり

→「奉る」の上に「誘ふ」という動詞があるので「~申し上げる」という謙譲の補助動詞(「れ」は受身の「る」の連用形)

このように上に動詞があるかないかで本動詞・補助動詞については簡単に見分けることができます。今回は「給ふ」と「奉る」を例に挙げましたがその他にも本動詞・補助動詞になり得るものはあるので覚えておきましょう

 

②:上に形容詞・形容動詞があるか

丁寧の補助動詞はもちろん動詞の下にも付きますが、形容詞・形容動詞にも付くということを覚えておきましょう。多くの人が「補助動詞=動詞にくっつく」と解説していますがそれだけ覚えてしまうのは危険です。

 

今回は丁寧の補助動詞として「侍り」と「候ふ」を例に見ていきましょう。

①:中の君、うつくしうはべり

→形容詞「美し」の後ろにあるので「侍り」は「~です」という丁寧の補助動詞

※ここでは「美し」はウ音便になっている

 

②:あはれにさぶらふ

→形容動詞「あはれなり」の後ろにあるので「候ふ」は「~です」という丁寧の補助動詞

 

※ちなみに「侍り」・「候ふ」の本動詞としての意味は「お仕えする(謙譲語)」と物体や人が存在するという意味での「あります(丁寧語)」です。上で紹介した2つの例はこの本来の動詞としての意味が失われているので補助動詞です。

 

このように形容詞・形容動詞にくっついている場合も補助動詞となる点は絶対に覚えておいてください。つまり形容詞と形容動詞の活用が曖昧だと敬語の問題でも間違えてしまうので覚えておかないといけないということです。しかも、まだまだ例外があるのでそれを見ていきましょう。

 

③:助動詞につくケース

実は補助動詞は助動詞に付いているケースもあります一番よく出てくるのは断定の助動詞「なり」の連用形「に」の下にくっついている場合です。

 

例えば、次のような例文を見ておきましょう。

①:人ざまもよき人におはす

→「に」は断定の「なり」なので「おはす」は「~でいらっしゃる」という尊敬の補助動詞

 

②:館刑部殿の随兵にはべり

→「に」は断定の「なり」なので「侍り」は「~です」という丁寧の補助動詞

これらのパターンは典型的な引っ掛け問題なので確実におさえておきましょう。ややこしい「に」の識別については別記事で詳しく紹介する予定です。

 

④:助詞が挟まるケース

そして、もう1つ覚えておいてほしいのが動詞+補助動詞の間に助詞が挟まっているパターンがあるということです。具体的には次の例を見てください。

①:格子には几帳添へてはべり

→動詞「添ふ」+接続助詞「て」+丁寧の補助動詞「侍り」

 

②:大納言の左大将にてはべりけるが

→断定の助動詞「なり」+接続助詞「て」+丁寧の補助動詞「侍り」

このように間に接続助詞などが挟まるケースがありますが、その場合も助詞を取り除いてみたときに上に動詞・形容詞・形容動詞・助動詞があれば補助動詞ということになります。

 

特に「て侍り」の形は一種の慣用表現として「~してございます」と覚えてしまってもいいと思います。

 

本動詞と補助動詞の見分け方を練習しよう

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さて、ここまで勉強してきたことを使って本動詞と補助動詞の識別の練習問題に挑戦してみましょう。

問題

問:次の太字部分は①~⑥のいずれにあたるか答えなさい

 

・女御子、生まれさせたまへ

・兼平一人さうらふとも、余の武者千騎とおぼしめせ

・雀にはべり

・めでたき琴はべり

・これをたてまつら

・御衣一つたまはら

・御文書きたてまつる

 

①尊敬の本動詞 ②尊敬の補助動詞

③謙譲の本動詞 ④謙譲の補助動詞

⑤丁寧の本動詞 ⑥丁寧の補助動詞

解説

・女御子、生まれさせたまへ

正解は②。尊敬の助動詞「す」+尊敬の補助動詞「給ふ」の二重尊敬。

 

・兼平一人さうらふとも、余の武者千騎とおぼしめせ

正解は③。本動詞の「候ふ」は「お仕えする、伺候する」という意味。

 

・雀にはべり

正解は⑥。「雀でございます」という意味。

 

・めでたき琴はべり

正解は⑤。「珍しい琴がございます」という意味。上の問題との混同に注意。

 

・これをたてまつら

正解は③。本動詞の「奉る」は差し上げるなどの意味。

 

・御衣一つたまはら

正解は③。謙譲の「給はる」(=頂く)と尊敬の「給ふ」の混同に注意。

 

・御文書きたてまつる

正解は④。上に「書く」があるから補助動詞とすぐ見抜ける。

 

まとめ

本動詞と補助動詞の違いは動詞が本来の意味で使われているかどうかという点です。

また、上を見て動詞に接続している場合は補助動詞ですが、形容詞・形容動詞・助動詞などにも接続しているケースがあるということは覚えておかないとまずいです。

 

さらに「て侍り」といったような間に助詞が挟まっても補助動詞となるケースまで覚えておくことで入試問題にも太刀打ちできるはず。まずは1つずつを整理して覚えていきましょう。