塾の先生というのはどんな仕事なのかというと、タイトルに書いた通り子供と勉強を一緒にする仕事だと僕は考えています。
このように聞くと「子供に勉強を教えるのが仕事じゃないの?」と思われる方も多いかもしれませんね。
実際、僕もこの仕事を始めたばかりのころはそのように考えていました。
でも、実際に講師として働いていると色々と見えてくるものがあり、考え方が変わりました。今回はこの点を掘り下げてみたいと思います。
生徒が勉強しない3つの理由
僕は少し前まで、生徒が知らない解法やテクニックを駆使し問題を解説したり、複雑な知識をわかりやすい言葉にして伝えていくのが塾講師の仕事だと思っていました。
しかし、それだけでは不十分なんだということに気が付きました。
いくらわかりやすい説明を提供しても生徒の成績がなかなか上がらないというケースがあったからです。
「なぜ、こんなにかみ砕いて何度も説明しているのに定着しないんだろう。」
僕はその理由を必死になって考え、次の3点が関係しているということに思い至りました。
①勉強計画が立てられない
②分かった気になっている
③一方的な押し付けになっている
今になって思えば、これらの要因があり生徒たちの成績があまり伸びなかったのではないかと感じます。
それぞれどういうことなのか詳しく説明したいと思います。
①勉強計画を立てられないから
ものすごく勉強ができて自分で勉強をガンガン進められる子供はさておき、多くの生徒さんにとって必要なのはわかりやすい解説だけではないと思います。
というのも、勉強というのはコンスタントに続けることで結果がでるものであり、いかに塾の時間に明快な解説を聞いたとしても、それを身に付けなければ意味がないからです。
例えば、週2回90分塾に通っている子供を考えてみましょう。
この子は1カ月で90×2×4=720分の学習をします。時間に直すと12時間となり、意外とすくないですよね。
塾の時間精一杯勉強したとしても、これだけの学習時間しか確保できていません。
じゃあ他の時間はどこで勉強するかと言えば、学校や家庭で学習することになります。
当たり前のことですが生徒が塾にいない間はどんなすごい講師であっても生徒に働きかけることはできません。
講師は生徒にわかりやすい解説をするだけでは不十分であって、生徒の勉強習慣を一緒に整えていく必要があるのです。
生徒と家庭学習についての約束をつくり、それを見守るメンターやコーチといった役割が塾講師に求められていると思います。
②分かった気になってしまうから
また、わかりやすい解説を講師がすることによって弊害も生まれてしまうと感じます。
それは生徒が分かった気になってしまうということです。
例えば、「英語の疑問文の作り方はbe動詞があればそれを文頭に出して、一般動詞があればdoやdoseを使うんだよ!」などとホワイトボードに書きながら解説をすると生徒たちは「そうなんだ!分かった!」と言ってはくれます。
しかし、次の授業で同じ部分を間違える生徒がかなり多くいるのです。
これはなぜなのかと言うと、塾に行ってわかりやすい解説を聞いたからもう大丈夫だと安心しきってしまい復習を行っていないからです。
それを防ぐために僕は授業の最後と宿題で復習を必ず取り入れたり、生徒自身にもう一度学んだことを説明してもらいます。
このように、「学んだことも復習しないとすぐ忘れる」ということを教えるのも講師の重要な役割だと思います。
③一方的な押し付けに感じるから
塾講師とか先生の中には生徒に対して自分の知識をひけらかし、優越感に浸っているイヤーなタイプの人たちが少なからず存在します。
自分の指導科目に対して誇りを持つのは良いことですが、まだ未熟な生徒に対して「オレが勉強を教えてやっている」といった態度は許せませんし、生徒も「上からの押し付け」では説明をしっかり聞いてくれません。
そもそも学問の前にはどんな人も平等であって、一緒に勉強していくスタンスというのが本当の勉強だと思います。
僕も生徒と会話している中で色々な発見がありますし、むしろ生徒たちから新たな視点や考え方を教わることがとても多くあります。
ある意味では講師や生徒といった線引きは必要なく、一緒に学ぶことを楽しむというのが理想的な関係だと感じます。
講師が生徒に伝えるべきなのは科目の内容だけでなく、勉強すること自体の楽しさです。
まとめ
塾講師の役割としてわかりやすい授業を提供するということはもちろんですが、それだけでは不十分だと感じます。
子供たちが塾に来ている間だけしか勉強しなかったり、説明を聞いただけで分かった気になり復習を怠ってしまうのは講師側の責任であると思います。
それを避けるためにも僕は宿題や勉強計画を生徒たちと一緒に作ることや、生徒の口からもう一度説明させるなど、子供たちによりそって勉強に取り組んでいくことを意識しています。
また、「上から目線」で生徒に接するのではなく彼らと同じ目線で勉強の楽しさを伝えていくことが一番良いアプローチだと思っています。
…と偉そうに言っても、熱が入るあまり一方的に解説してしまったり上手い発問ができていないこともしばしばあるなと反省させられる日々です。
これらのことは常に心にとどめ、これからも精進していきたいと思います。